月に願いを

・悲哀

戦に出てもう半年以上。

清鷹は無事でいるだろうか…。

結姫の心の大半は清鷹の事で占められていた。

以前の快活さを欠いた結姫に、志乃も『姫様があれほど慕っている清鷹様がどうされているかもわからないのだから…』と胸を痛めていた。





さらさらと衣擦れの音が聞こえたと思うと柔らかな声が響いた。

「結、入りますよ」

「母上…」

結姫は急ぎ上座を奥方に譲る。

華麗に裾を捌いて座に着いた奥方は微笑みをたたえて結姫を見る。

「結。よい知らせを持ってきました。東雲が国境の羽鳥軍を破ったそうです」

奥方の話を聞き結姫も城下が戦場にならない事に胸を撫で下ろした。

「双葉の兵も東雲に付き、大軍にて羽鳥を双葉との国境まで退かせたとか。思わぬ惨敗に羽鳥は和睦を申し入れてきたらしいですよ」

「では父上はご無事でおられるのですね」

奥方はにっこり笑った。

「ええ。今は双葉城で和睦の準備をされていると」


国と父が無事との知らせに安心したのも束の間、結姫は最大の関心事を確かめずにいられなかった。
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