月に願いを
結姫は我が耳を疑った。

「清…鷹…が…?」

傍に控えていた志乃も思わず拳を握った。

「もしや敵方に捕らえられているやも…」

「それはないでしょう。捕らえられておれば和睦の申し入れ時に話が出るはず」

奥方の言葉に一縷の望みを断たれた結姫は震える声で奥方に告げた。

「母上…。具合がすぐれないので休ませていただいてもよいでしょうか…」

明らかに様子のおかしい結姫に奥方は志乃に命じた。

「すぐに床の用意を。結を休ませた後、志乃は私の元へ」

志乃は一礼して部屋を辞する奥方を見送った。
< 18 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop