月に願いを
清鷹の父親の清重はこの国の君主である結姫の父の信頼する重臣の一人である。
清鷹は結姫が生まれる以前から清重よりこう言われて育った。

『殿の御子が男子であればその命惜しまず若殿のために一生働け。女子であれば輿入れされるまで身を賭してお守りせよ』

君主の御子は未だ結姫一人であり、そう遠くない未来にいずれ輿入れするだろう。
結姫への叶わぬ想いを抱きつつその日まで守ると清鷹は決めていた。

結姫も物心ついた時から傍におり自分を見守ってくれている清鷹に全幅の信頼と臣下に抱くには不似合いな感情を寄せていた。



ようやく戻ってきた志乃に手伝わせて、結姫は華麗な打ち掛け姿から小袖と袴という姫君らしからぬ恰好となり清鷹の訪れを待っていた。
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