月に願いを
五日をかけてようやく羽鳥城に入った結姫は、今後の居所となる部屋に案内され志乃と二人になったとたん大きく伸びをした。

「結姫様っ!そのような姿を羽鳥の者に見られでもしたら…!」

「ここには志乃しかおらぬではないか。ずっと座りっぱなしで腰が痛いわ。これなら馬で駆けた方が早かったのではないか?」

明るく笑う結姫に志乃はとんでもない!と首を振る。

「輿入れの姫が馬で入城するなど聞いた事がございません!」

「不便なものだな」

ようやく腰を下ろした結姫に志乃はため息をついた。

「くれぐれも若殿の前でそのような事は申し上げないでください」

口うるさい志乃に結姫は返事代わりに手を振った。

そんなやり取りが終わるのを待っていたかのように羽鳥の者が敷居の外で告げた。
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