冷たい夜は桜の色

ここは居心地がいい。

ここから外を見ていると病院にいることを忘れられる。そんな気がした。

まるでこの空間だけこの世界から切り取られていて、自分だけがそこにいるよう。

私は生まれたときから心臓が人より小さいらしかった。


お母さんにその事を聞かされても小さかった私には全然理解できなかった。


小さかった私はなんで他の子のようには走ったり遊んだりできないんだと何度も思った。


胸に手を当ててみても私の心臓はちゃんと動いてた。


ある朝私は病院を抜けだした。


外に出た私は家に向かって走った。

私は元気で大丈夫。走っても遊んでもなんともないよ。そうお母さんに伝えたかったから。

病院から家までは歩いて10分を程しかない。走ればすぐだ。


私は走った。早く会いたかったから、しかし家が見え始めた時、


私の心臓は止まってしまった。


次に目を覚ました時私は病室のベッドの上にいた。


そして私の胸には大きな傷ができていた。


その時初めて私はほかの子と違うと自覚した。自分が病気であると。


それ以来私は走ることをやめた


私は何度も入退院を繰り返して、ほとんどという時間をこの病院で過ごした。

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