天国の丘
「初めて二人のステージを観たのは赤坂のオータムハウスだったの。
それ以来、私にとってのベストシンガーが蒔田リサで、ベストプレーヤーが新井リュウヤになったんだ」
「嬉しいね。オータムハウスといやあ、三年前か…そん時からの筋金入りのファンとこうして飲み明かせるなんて光栄な事だ」
実は、レナもミュージシャンを目指し、時々アマチュアバンドの仲間とセッションしてると言った。
それ以上に驚いたのは、レナが僕より三つも年下だと知らされた事。
と言う事は十八?信じられない。
確かに僕は人一倍童顔で、夜中にコンビニへ行った時など、未成年と間違えられてパトロール中のお巡りさんに呼び止められたりするけど、百人が百人、僕と彼女を見比べたら、皆、彼女の方が三つ上だと言うに決まってる。
十五の頃からジャズやブルースを聴きにライブハウスに足を運ぶ少女って、何なんだ?
更に追い撃ちをかけられたのは、リサが僕と同い年だった事。
リュウヤさんが、
「コーイチは多分大器晩成なんだよ」
と、余り意味の無い慰めを言ってくれたけど、ちっとも慰めにはならなかった。
見た目の幼さで落ち込んだと言っても、それはほんの一瞬の事。
とにかく僕は間違い無くレナにやられてしまったようだ。