ダイヤモンド・ヒーロー
九回ウラ【咲良】





気づいたら…… 観客席には誰もいなくなっていた。

春香はお母さんと先に帰るらしく、試合の後、すぐに帰っていった。


少し前のあの熱狂的な空気があたしの体に染み付いている。

暑い、暑い夏。 その暑さに負けないくらいの熱がこの球場を包み込んでいた。




「湊人―――」


会えるかな? …… 会いたいな。


湊人のユニフォーム姿を自分の目で見るのは、中学生以来。

湊人はやっぱり男の子なわけで、遠くからでもはっきりわかる。

逞しく、一段と大きくなった。


あたしと会わなかったこの3年間で、湊人は確実に“成長”していたんだ。

自分の夢のために……。

そして、あたしの夢のために―――。




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