浮気女の嫁入り大作戦

 大好きな彼氏、樹。

 最低でも5年だと言っていた。

 6年かもしれない。

 10年かもしれない。

 何年であるにしろ、簡単に待てる年数ではない。

(いっそのこと、結婚して一緒に行こうって言ってくれたら良かったのに)

 奈緒はそう思いながら、昨日の樹の言葉を思い出してみる。

 転勤は少し前にわかっていたと言っていた。

 樹なりに悩んでインド行きを決めたのかもしれないが、一言相談があっても良かったではないか。

 人の気持ちを汲めない樹の性格上、そうはできなかったのかもしれないが。

 奈緒は珍しく朝から2本のタバコを吸い、モヤモヤとイライラと失望感を抱えたまま仕事に臨んだ。

 その表情は、いつもコーヒーをねだってくる課長でさえ声をかけれないほど暗く、冴えない。

 寝不足でむくんだ酷い顔。

 美人が台無しである。

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