詠い人
時間にすれば、たった数時間。

詠い人に会って、架南の気持ちを知って、ただそれだけのことだったけど、僕ら兄妹にしてみたら大冒険だった。
あれから、もう1ヶ月たって、夏休み真っ盛りだ。
あの日以来、僕は幻歌たちとは会っていない。
だけど、いつか会いにきてくれると信じている。


一つ、変わったことがある。
あのあと、体調を崩した咲良は、入院することになった。
無理もない。今まで使ったことのない足を動かして、ずっとはしゃいだりしていたから、魔法が解けて、身体のあちこちにガタが来たのだ。
これから、お見舞いに行くことにしてる。

ピンポーン

「あれ、お客さん、かな?」

慌てて玄関のドアを開けると、二人の少女がいた。
片方は、銀色の長い髪を揺らして、片方は、あどけなくも大人びた笑みを浮かべてる。

「こんにちは、楓くん」

「咲良ちゃんのお見舞いに行きたいんですけど、病院わからないので来ちゃいました」

「あ……二人とも、いらっしゃい」

幻歌は、満面の笑みを浮かべて言った。

「逢いにきたよ、楓くん!」
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