メガネの裏はひとりじめⅠ
クラスメートみんなの視線は、言い合いをやめたあたしとひまから突然現れた女の子と道留君の方へと向けられていた。
道留君と女の子、二人を見る目はどれも好奇に満ち溢れていて。
え、彼女?とか、付き合ってんのかな?とか、でもなんかお似合いじゃない?とか。
そんな勝手なことを言う人達の口にあんパンをぶちこんでやりたくなった。いや、別にあんパンじゃなくていいんだけど。
それから"違う"って、言ってやりたかった。彼女はあの子じゃなくてあたしなんだよって。みんなに聞こえるように大声で言ってやりたかった。
でも、それはできなくて。道留君に嫌われたくないから、涙を落としながらギュッと唇を噛みしめてひたすら我慢。
と。
「おら。さっさとこれ出してこい。」
ペシン、頭に軽い衝撃と痛み。相変わらず口の悪いひまがいきなりそう言ってきて。
だけど、それはあたしにとっては救い。この居たらずっと泣き止めそうにない、辛い教室から抜け出せるチャンス。
そっと顔を上げれば、目があったひまは眉間にシワを寄せて可愛い顔を台無しにしてて、
「ブスがさらにブスになってんぞ。」
なんて、憎たらしさも相変わらず。あー、むっかつく。ふざけんな。…って、今は怒る気になれないんだけど。
ぶっきらぼうにワイシャツの袖で涙を拭ってくれるひまに、今だけ(本当に今だけね!)――…ありがとう。