ただ あなただけ・・・

「――妃奈・・・今日は帰るか?」


再び手を繋ぎながら『デート』をしていると、隼人さんが言い出した。


「・・え・・・?」


――さっきので呆れたのかな・・・そうだよね・・・自分は浮気相手で本彼とキスしてるトコ見たら・・・――


黙っている私に、隼人さんは頭をクシャクシャっと撫でた。


「困らせるつもりは無かったけどな?」


――違う・・・困らせているのは私なのに―――


返事のかわりに手をぎゅっと握った。


「・・・半分・・上の空だからな・・・?疲れているなら、帰って休んだ方がいい」


私に気を遣ってくれるのだろう、さっきから歩くペースがゆっくりだ。


「・・・ごめんなさい・・・」


「何故謝るんだ?」


――それは・・・あなたが優し過ぎるから――


思わず口から出そうになったが、慌てて言葉を飲み込んだ。
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