結婚事情
めずらしく残業もせず帰ろうとした私に、課長がおちょけた口調で言った。

「おう、もうお帰りですか?」

「あ、はい。お先に失礼します。」

「んん?デートかなんかか?」

ちっ。

どいつもこいつも。

こういうのセクハラなんですよ!って言いたいけど言えない小心者の私。

「たまには、私にもノー残業デイくださいよ。」

課長の言葉を笑って受け流した。

課長も笑って右手を挙げた。

「そうだな。おつかれさん。」

課長って、一言余計な時もあるけど、結構いい人だったりする。

私は、職場に一礼して更衣室へ足早に向かった。


更衣室につくなり携帯を開ける。

水口さんから、メールきてないよね?

実は今日は仕事が終わらなくて会えなくなったとか・・・

そんなショッキングな想像をしながら。

だって、最悪の事態を考えといた方が、気分が楽じゃない?

もし、そうだったとしても「やっぱり」って思えるし、

そうじゃなかったら、うれしさ倍増だしね。

こんな風に考えるようになったのも、最近の話だけど。

いかに傷つかないで生きていくかっていうアラサー女の知恵みたいなもんだ。
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