SOUND・BOND

2-Ⅱ




「おい真空、まだか?」

「ちょっと待って~。リボンが上手く出来ないの~」


玄関先で声をかけると、奥の部屋からぱたぱたと妹の真空が駆けてくる。

今、彼女の真っ直ぐな黒髪は両方の耳の上辺りで縛ろうとしているのか、片方は綺麗に結ばれているが、もう一方はやりかけで違う方向へ撥ねていた。

一生懸命縛りながら来るのだが、慌てているせいかなかなか整わないでいる。


「ほら、かしてみろ」


陸燈は見かねて、縛りかけの髪を解くと再び手櫛で整えてから縛り直してやる。


「出来たぞ?」


真空はそれに触れて左右の感覚を確かめる。
 
変な方向に撥ねていた髪が綺麗に真っ直ぐおりていることを知ると、ひらひらと首を振ってそれを玩具にする。


「さっすがお兄ちゃん!器用だね」
 

それはそうだ。2人きりで暮らすようになってから毎朝のように真空の髪をいじってきたのだから。
 
ここしばらくは彼女自身で綺麗にしていたからいじってやることはなかったが、遠のいていたとはいえまだまだこの腕は鈍っていないようだ。


「煽てるのはいいから、早く靴履けよ」

「おだてたんじゃないよぉ。褒めたんだよ」
 

言いながらも素早く靴に足を突っ込むと、爪先でとんとんしながら何を思ってか、いきなり抱きついてきた。


「えらいえらい」


と、彼女は陸燈の腰の辺りを子どもをあやすかのように叩く。


「おいこら、俺は一体何歳だよ?」


胸より少し下の辺りまでしか届かない真空の頭を、陸燈は整えた髪が崩れない程度に触れて、苦笑いしながら撫でてやる。


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