優しい刻

「優美さんは、どんな看護師でありたいのかな」

白い髭をさすりながら佐々木さんは私に問う。

「私は……」




私は

どんな看護師を、どんな人間を目指してきたの?




「私は――患者さんの痛みを分かってあげられる、心から尽くせる看護師でありたい……」




戴帽式で誓ったのは、まるでナイチンゲールを夢見た様な空想だったかもしれない。

けれど今は違う。

現実を知って。

それでもなお、私は理想の看護師になりたいんだ。





「きっと優美さんは、もう思い描いた通りの看護師さんだよ」




飲み干した珈琲の最後の一滴は


冷たいながらも


とても温かな味がした。





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