純愛ワルツ
「私以外にも茜を狙ってる子は沢山いるわ。…何処にも行かないよう、ちゃんと茜を掴んでおきなさい」




天音さんは私に背を向けると

カツカツとヒールを鳴らしながら去って行った。






「天音さん、ありがとう…」




私が茜くんに出会う前から茜くんを好きだった天音さん。



私なんかよりもいっぱい

茜くんのいい所も悪い所も、癖も好き嫌いも知ってるはず。




きっと天音さんは、私が茜くんを好きだと想う気持ちよりも

茜くんの事が好きなんだと想う。




でも、それ以上に絶対茜くんを好きになるから


離したりなんかしないよ。







私は左手の薬指に嵌まっている指輪を右手で握り締めてから


小さくなっていく天音さんの背中を見つめた。





少しだけ涙が流れて

指輪に弾いて、落ちた。
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