あの音をもう1度
「ど、どうして何も言ってくれなかったんですか?!
アメリカに行くって!」
--あのチャリティーの後、控室にもどこにもバルトニアさんの姿はなかった。
ただ、【素晴らしい演奏だったよ】と書かれたメモのみが残されていた。
私も涼太とのことで浮かれていて、後日会いに行こうと勝手に決めていた。
バルトニアさんが・・・
“有名ヴァイオリンニスト”だということを忘れて。
「・・・楽め。言うなって言ったのに」
バルトニアさんは複雑そうに少し笑った。