飴色蝶 *Ⅰ*
知らない世界

泣かないで

庵は、菫と別れたその場所で

振り返る事無く

立ち尽くしていた。

菫の涙を、何度見ただろうか

『もう、俺の為に泣くな
 泣かないで』

「イオリさん、ママが帰る用意
 が整ってお店で待っています
 私はこれで、さようなら」

紅に声をかけられて、庵は
やっと我に返り動き出せた。

幾つかのライトを消した
薄明かりの店の中
  
朱莉はソファーに腰を降ろして
何かを考えていた。

「シュリ、送って行くよ
 行こう」

「あの子は誰?貴方があんなに
 優しく女性を抱けるなんて
 ・・・知らなかった」
 
庵は朱利の肩に手を

そっと乗せた。

「すみれに焼いてるの?」
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