飴色蝶 *Ⅰ*
彼は、そんな風に
あれこれと興味本位に
詮索する人達の目を
全く気にする事無く

堂々と、私の手を
繋いで歩いてくれた。

庵先輩が、傍にいて
くれて良かった。

一人でこんな好奇の目に
晒されていたかと思うと

恥ずかしくて

堪らなくなる

「先輩、ありがとう」

「その、せんぱいって
 言うの
 
 いいかげん
 やめろよ
 
 イオリでいいよ
 すみれ」

私は、先輩が名前を
憶えてくれていた事に
驚く。

「私の名前・・・」

「俺、抱いた
 女の名前は
 すぐ忘れるし
 間違えるけど
 
 抱かなかった
 女の名前は
 いつまでも
 憶えてる
 ・・・・・・」
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