飴色蝶 *Ⅰ*

消えた蝶々

あの時、消えた蝶々

あなたは、今頃

どこを、ヒラヒラと漂っている
のだろうか。

空中、それとも水面の上に
浮かんでは揺れているの。

もう一度、あなたに逢いたい

・・・・・・

庵の腕に抱きしめられながら
私は、やっと気がついた。

貴方が、私に何も話さなかった
のは、こうなる事が分かって
いたから。

震えの止まらない私を、庵は
夢中で抱きしめてくれた。

「大丈夫、大丈夫だよ
 すみれ・・・」

私が現実を見なくて済むように
貴方はずっと、何も言わずに
隠してくれていた。

それは、全て私の為だった。

彼の現実を受け入れるには
私はあまりにも無知すぎた。
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