飴色蝶 *Ⅰ*
「アイツが大工を辞めたのは
 その頃、親父の仕事が
 傾きかけたからなんだ
『自分がぶら下がっていては
 棟梁に迷惑がかかる』
 そうイオリは
 最後に言ったらしい」

そう話す、幹生さんの瞳に
薄っすらと涙が見えたような
気がした。

その時、私の携帯が鳴る。

「イオリからだぁ」

「ちょっと、携帯貸して」

幹生は菫から携帯を取り
その電話に出た。

「イオリ、俺だよ・・・
 ミキオ
 
 スミレちゃんを返して
 欲しければ・・・・・・
 どうしよう?」

「ミキちゃん
 考えてなかったの
 もう、貸して・・・
 もしもし、イオリさん?
 スミレを返して欲しければ
 私の家に来て、じゃないと
 二度と返さないから」

雪乃は、携帯を切って
もちろん電源も落とした。

「プープープー」

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