飴色蝶 *Ⅰ*
朝からセットした髪は
湿気と混雑のせいで
ボサボサ
  
雨に濡れて湿った
ブレザーが隣の人と
ピッタリと触れ合い

その下の汗を掻いた
ブラウスが肌に
締め付けられて
気持ち悪く

置き場所の無い
濡れた傘を持つ手が
苦痛で堪らない。

『早く
 この場所から出たい
 
 早く
 駅についてほしい
 
 はやく、はやく』

あと、四つ駅を超えれば

・・・

電車が停車して開くドア
を見た、私の視線が

乗車する彼を
捕らえて離さない

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