飴色蝶 *Ⅰ*
「登る必要なんか無い
 俺は俺のままで
 堕ちていければ
 それでいい
 
 俺は何百年立っても
 黒い龍のまま、ここで
 この血の果てで
 埋もれればいい」

朱莉は、そっと彼の背中
に頬を寄せた。

すばやく人込みを抜けて
駆けて行く貴方の背中に
私は、声の限り叫んだ。
 
『イオリ・・・・・・』

貴方の名を・・・ 

貴方は、振り返り

私へと、歩み寄り

そして、その胸に
抱きしめてくれた。

その胸に、貴方は今・・

誰を抱くの?

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