飴色蝶 *Ⅰ*
車から降りて、菫の後を追った
会長は

二人が抱き合う姿を見て
笑いながら車へと戻って行く。

「お嬢さん
 えらい男に惚れたもんだ」

朱莉は、庵があんなに優しく
女性を抱きしめる姿に
ほんの少しの嫉妬を覚え
胸が苦しくなり
お店へと戻って行った。

「すみれ、どうしてここに」

「ユキから全て聞いた・・・
 
 イオリが極道でも
 
 私の貴方を愛する気持ちは
 変わらない」
       
菫と距離を取る庵

彼女に触れる手が離れた。

「すみれ、ごめんな
 俺は、おまえを受け止めて
 やれない
 俺今、愛してる女がいるんだ
 そいつを、この手で
 幸せにしてやりたい」

誰も愛さないはずの貴方が

一人の女性を愛してしまった。
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