前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
ゲンナリしていると、
「おうおう盛り上がっちゃって」
「楽しそうですわね」
二つの笑声が聞こえてきた。
首を捻ると鈴理先輩のお友達、川島先輩と宇津木先輩がトレイを持って立っていた。
定食を買ってきたようだ。
そういえば、鈴理先輩は昼食を……あ、お弁当を持っている。
此処でお弁当を食べようとしていたんだな。
「鈴理、すーっかりご機嫌になったわね。さっきまでイジケ虫になっていたのにさ」
「煩い早苗」
「ほーんとのことじゃなーい。な、百合子」
「ええ、ほんとですわ。あら、大雅さんもご一緒でしたの? こんにちは」
宇津木先輩に微笑まれ、「あ、おう」生返事をする大雅先輩。
ふふっと笑声を漏らす宇津木先輩が隣に座って良いかと聞く。
「べつにいいけど」
ぶっきら棒に返す某俺様先輩に俺は思った。わっかりやすいな、この人、と。
あからさま宇津木先輩の前じゃ態度が違うんだもんな。
大雅先輩の好きな人、誰が好きなのか、分かっちまったよ。
てか、おいおい、男は攻めが大事なんじゃないのか?
好きな人が隣に座ったというのに、話題も振らないってどーゆーことだ? 攻めはどーしたよ、攻めは。
「ドヘタレ。もっと攻めていけばいいのに」
鈴理先輩がちっさな悪態をついた。
なるほど、好きな人の前じゃイマイチ押しの足りない俺様になるんだな……然して、受け身の俺と変わらなくないか? それ。
「ふふっ、大雅さん。口端にソースがついていますわ。失礼します」
「え、うぉっち! いいってっ、自分ですっから!」
「でも誰かにしてもらった方が早いですわ。しかも、そっちは逆ですし。ほら、お顔をこっち向けて」
柔らかな笑みを向けられ、「勝手にしろよ」大雅先輩が投げやりに降参。
笑声を漏らす宇津木先輩は真っ白なハンカチで大雅先輩の口端に付いたソースを拭い始める。
ぶっすりしているけど、大雅先輩すっげぇ嬉しそうだな。
目に見えるくらい耳が赤いよ。
ははっ、純情さん。
俺は弁当に目を落としてキャベツを箸で摘まむと、隣に座っている鈴理先輩に質問をした。