前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



「だろ?」ニッと笑う大雅先輩は俺の背中をバシバシ叩いて、弁当の中に入っているダシ巻きを取っていった。

ちょ、それ、先輩が俺に作ってくれたダシ巻きっ、楽しみに取っておいたのに!


ががーん、ショックを受ける俺を余所に大雅先輩は鈴理先輩の弁当からもダシ巻きを取っていく。玉子焼き系が好きらしい。


鈴理先輩は傲慢な態度を取る大雅先輩に呆れつつ、「先ほどの発言の意味は?」と問い掛け。

ダシ巻きを咀嚼する大雅先輩は、「だから」割り箸で先輩を指した。


「鈴理がスッゲェえげつないセックスをこいつとしたから、こいつのメンタル面が弱っているんじゃねえの? シたんだろ。この前の休日に」


「シ、シてませんよ大雅先輩! 今も俺と先輩は健全にっ」

「豊福のここ、キスマークだらけだぜ? んー?」


大雅先輩がニヤッと口角をつり上げて、俺の首筋を割り箸で指してくる。

お行儀が悪いです、大雅先輩。なんて言えず、俺は頬を紅潮させて「これはその、」ちょっとした戯れがありまして、とモゴモゴ。

恥ずかしさで身を小さくする俺に大笑いする大雅先輩は、肘で小突いてきた。


「とかなんとか言って、ヤられちまったんだろ? どんな情事だったのか、後でこっそり教えろよ?」


だから違うと言っているのに!

カァッと顔を赤くしてダンマリになる俺は、取り敢えず食べることに集中した。

美味しいよ、この胡麻和えサラダ。美味しい、超美味しい。ブロッコリーとかマジ美味い。


一方鈴理先輩はド不機嫌で、「次こそ食ってやる」と意気込んでいた。

これだけで大雅先輩は察したんだろう。

「なんだ。逃げられたのかよ。マジダッセェ」

ゲラゲラ笑声を上げた。

煩いと先輩は大雅先輩の丼からカツを取り上げて、口に押し込む。


「あんたこそ、さっさと百合子をものにしたらどうだ? ここぞとばかりにドヘタレをかますくせに」

「っ、べ、別に百合子はカンケーねぇだろ……それにテメェも知っているだろうが。あいつは兄貴の許婚だ」


驚愕の事実。

え、嘘、宇津木先輩にも許婚がいたのかよ。

財閥の子息令嬢って絶対に許婚を作らないといけない規則なのか?

しかもお兄さんの許婚。

ということは、え、大雅先輩ってお兄さんの許婚さんに恋慕を抱いて?


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