前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―

05. 君の見ていた世界






情緒不安定の俺を察してくれた先輩は、いつもみたいなアダルト展開は避けてくれた。 

食われても良いと言った手前、もしかするとそういう展開になるかもしれない。

高校生という年齢制限の枠は飛び越えてしまうかもしれない。


片隅で緊張感を抱いていた俺だからこそ、先輩の小さな気遣いには感謝した。


口ではセックスうんぬん口走っていたけれど、今の彼女にそういう気はなく、俺が本調子になるまで、ジッと傍にいてくれる。

イケメンとは鈴理先輩を指すに違いない。あ、先輩はイケウーマンか。



告白後、俺は先輩とホテルのレストランで遅めの食事を取り、別個でシャワーを浴びて寝支度を始めていた。


順に先輩がシャワーを浴び、俺がその後に浴びる。

まさしく今は入浴の真っ最中だった。


ぼんやりと生ぬるいシャワーを浴びる。

高揚していた気持ちが次第に萎み、冷静になる自分が出てくる。


するとどうだ、また言い知れぬネガティブの波に呑まれる。

冷水にして気持ちを落ち着けてみるんだけど、もやっとした気分が心中を占める。


元気になれという方がまだ無理なのかもしれない。俺は一番の親不孝をしちまったんだから。


彼女は俺のせいじゃないと言ってくれた。


けれど、間接的に原因を作ったのは紛れもない俺なんだ。

あの時、聞き分けが良かったら。後悔しても、何も変わらないんだけどさ。


じっくり冷水で体を清めた俺は冷たい体をそのままに脱衣所で体を拭いて、着替えに手を伸ばした。

とはいえ、着替えも何もないから制服に身を包むしかない。

下着も身に付けないわけにいかないから、さっきまで穿いていたものを……あれ。


「真新しい下着とパジャマが用意されている」


そして俺の制服が消えているというミステリー。

なにこれサービスですか? ホテルってそんなに気前がいいのか? それとも先輩がお松さん辺りに頼んで用意してくれたのかな?


サイズも俺の体に合っているから、やっぱこれは俺のために用意されたものだ。


「制服は洗ってくれているのかな」


他に着る物もないから有り難く着用。

他人事のように消えた制服の行方を考えつつ、タオルで髪を拭きながら部屋へ戻る。


一室は闇に包まれていた。

鈴理先輩は先に寝てしまったのだろうか?

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