前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―

XX. 先輩と俺



□ ■ □


「豊福 空(とよふくそら)、空はいるか? 今日も竹之内 鈴理(たけのうち すずり)がわざわざ。大切なことだから二度言うが、わざわざ足を運んでやった。あんたの体を愛しに来てやっ……おっと失敬。正直に言い過ぎた。とにもかくにもあんたに会いに来てやったぞ」


前略、今日も不況の波に抗おうと必死に働いている父さん、母さん。

あなた方の息子・豊福空は、最近、めでたく自分のことを好きだと言ってくれる女の子にめぐり会いました。

果たして“女の子”と可愛く言って良いものなのか、大変躊躇うところなのではありますが、取り敢えず俺のことを好きだと言ってくれる女の子にめぐり会えました。


「空、そら! まったく、あいつは何処にいる。あたしがこうやって体を愛でてやりに……失礼。会いに来たというのに」


こんな凡人くんを好きと仰ってくれるお方の名前は竹之内鈴理先輩。

学年は俺の一つ上で現在高二。竹之内財閥のご令嬢だそうです。


財閥ですよ、財閥。

ドラマだけの世界かと思っていましたが、本当にあるんですよ。驚きですね。


嗚呼、財閥だなんて貧乏学生の俺とは対照的な方ですよ。

なんでも鈴理先輩は毎日車で送り迎えされているとか!


俺なんてバス通学に掛かる交通費を生活費に回すために、毎日三十分以上掛けて歩いて来ているというのに……これが庶民とお嬢の違いなんでしょうか。

一目でいいので、ご令嬢の食事をご拝見したいものですね。


「むっ、教室にはいないのか。いや、あいつは照れ屋だしな。きっとまだ教室にいる筈。そうだな、あの教卓辺りが怪しいな」


ギク。現実逃避がてらにやっていた両親語りをやめた俺は(なんて虚しい心の慰めなんだ!) 、ぎくしゃくと身を強張らせた。


カツカツカツ、カツカツカツ、忙しない足音がこっちに近付いてくる。

比例して俺の心臓もドッドッドと高鳴り始めた。

来るなよ、お願いだから気付くなよ。気付くなよ。気付くッ?!
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