前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



そんな俺が観覧車に乗った日には、先輩に迷惑しか掛けない。

分かっているよ。見栄を張ってまで乗ろうとはしないさ。


でも決めていたことは実行したい。


俺は先輩の手を握って、「こっちへ」観覧車真下付近まで歩む。

足を止めると人がいないこと確認。疎らに人はいるけど、この際しょうがない。

首をしきりに傾げる先輩と向かい合って、俺は頬を紅潮させながらおずおず口を開く。


「高所恐怖症。治すのにすっげぇ時間掛かると思います。いつになるか分かんないっす。だけど、その、治ったら最初に俺と観覧車に乗って下さい。本当は観覧車で伝えたかったっすけど、今の俺には無理だから此処で言います」


決めていたんだ、観覧車で絶対に気持ちを伝えるって。

色んなアクシデントで気持ちを鈴理先輩に伝えちゃったけど。


前みたいにグズグズ泣いてる時じゃない、弱っている時じゃない、過去に嘆いている俺じゃない。


真剣に人に気持ちを伝えるって決めた俺で此処に立っているんだ。



さあ、今度こそ真っ直ぐに伝えよう、肉食お嬢様にこの気持ち。

もう理由を付けて逃げたりせず、相手のことを知りたいからお付き合いする条件も投げ捨てて、傍にいたい自分のこの意思を彼女に告げよう。




「鈴理先輩、俺は貴方が好きです。知りたいから付き合っていましたけど、好きだと自覚しました。先輩のことが好きだから、俺と正式にお付き合いしてください」




不意打ちに赤面する彼女にしてやったりと、一笑。

勇気を出して彼女の両頬を包むと、俺から二度目のキスを送る。


彼女に負けず劣らず顔が赤く染まる俺だけど、それでも良かった。

彼女に想いをこうして告げられたんだから。


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