【短編】天国への階段
 『本当にいいの? もうちょっと生身期限(しょうみきげん)あるけど』


 もう、いいよ‥。 


 『じゃ、今 連れて行くけどいい?』


 いいよ。 


 『今なら、誰にも気付かれず息をひきとることになるけど、平気?
 淋しくない?』 


 いいよ。 


 ぐぅわぁ〜〜ん


 本の一瞬で、肉体から意識が抜け出ていった。 


 『まだ、気付いてない息子の松に、バイバイっていいな。』


 バイバイ。 

 まだ、寝てるよ。 


 私は、まだ辺りが明るくなる前に。 


 肉体(からだ)から抜けた。 


 初めて、上から自分の肉体を見たら、毛艶も悪くなってて、丸まってて、寂しそうな感じがした。 


 『思い残すことはない?』


 「ひぃ〜ちゃんに会いたい。」


 『いいよ。 行こうか。』

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