BABY×DOLL
【プロローグ】
彼女を数年ぶりに見かけたのは

スクリーンの中でだった。


そういえばしばらく見てなかったね。

…元気そうじゃん


私は足を組みシートに深くもたれかかって
スクリーンを眺めていた。

映画を観る…というよりは『彼女』の動き、セリフ、顔の表情ばかりを目で追ってしまっていた。

出演していたのに気付かなかったな。

観たい映画だったのに内容がちっとも頭に入ってこない。

『観た人の九割が涙しました!』
って宣伝してたから観にきたのに。

私は涙しなかった一割に入る事になるわけ?

泣きたくて観に来たのに!
ハンカチもしっかりタオル生地の持ってきたし、ティッシュだって用意したし、メイクも落ちにくいのにしてきたのに!

アンタばかり見ちゃってて全然泣けないわ。

でも…まぁ、いっか?

彼女の顔を観ながら私の頭には映画とは別の映像が流れ込んできていた。







──ねぇ?セリカ

アンタはちゃんと覚えてる?



よく考えると、ほんの少しの間だったけど、長い時間一緒にいたみたいだったよね。

私達、たくさん勉強になったし

強くなったよね?



あの頃の事
まるで昨日の事のように思い出せるよ───
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