黒紅花
ひさぎ、貴方が一番求めるもの

それは、人の温もり。

深く愛し合う、人との交わり。

私は、それを貴方に与えて
あげられない。

貴方を心底、癒してあげられな
いことが昨夜の出来事で十分に
分かった私は、もうこれ以上
挑戦してみることも、無理する
こともなく

この愛を失うことを選ぶ・・・

貴方にしてあげられることは
私が貴方の前から消えること。

翌朝、ホテルを出た二人はバイ
クを飛ばして、ある場所に降り
立つ。

道路の脇に停車する、バイク。

そう、ここは、出会ったあの日
ひさぎに初めてバイクで送って
もらったあの場所・・・

「悪い
 俺が寝すぎたせいで・・・
 
 学校遅刻だな?」

「うん」

私は、離れがたくひさぎの腕をとる。

「休んで、俺と居る?」
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