黒紅花
貴方の声

彼の存在

触れ合う手は次第に力が
込められ、並んでいる列
から、私を自分の方へと
引き寄せる。

私は、この場所を
離れる事はできない。

一歩、踏み出した足を
元に戻す。

肘まで捲くられた
シャツの袖から覗く
貴方の腕がもう一度
私を、引き寄せる。

「あの、困ります
 私、次のバスに
 乗らないと・・・」

見上げた私は

言葉に詰まる。

肩にとどくかどどかない
かの綺麗な髪は金色に
染まる。

艶のある髪が、輝く。

『・・・きれい』

ううん、綺麗なのは
髪だけじゃない。

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