【ND第1回】はじまりは君の隣で

短くカットされた髪は生来のくせ毛らしく、あちらこちらに跳ね、春の陽光を浴びて、毛先がまばゆく透けている。

彼は、さきほどから、身じろぎすらしない。

体の大きな彼が、これほど堂々と眠っていれば、自然と先生の目にも留まらずにあるわけがない。

それでも、先生は呪文を唱え続けるだけで、注意をしようとはしなかった。

彼のほうをうかがうことも、なかった。

注意をするのも億劫になるような、穏やかな静けさだった。

わたしは、目を自分の机に移した。

黒板に書かれた文字を写している最中だった。


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