防衛要塞都市
真っ赤な夕日に照らされる、平原があった。


どこまでも続く平原には草花しか見当たらなく、それらは風に吹かれて揺れるばかりだ。


平原の真ん中に、ぽつんと十字架が立っていた。


真っ白な石で作られたそれは、その下で眠る死者に黙祷を捧げるため、静かに立っている。


同じような十字架が、あちらこちらに点在していた。


それらには、どれも同じように、日付と番号が彫られている。


その墓地から少し離れたところに、とても背の高い、真っ黒なビルが立ちはだかっていた。


全面が黒く、窓一つ、ドア一つ無い。


ビルの周りには、たくさんの家や店などの建物、それに道が広がっていた。


ただし、何個所にも爆発痕があり、弾痕があり、それらの建物はほとんどが崩壊、または半壊している。


そのビルから東西南北に延びた道は、遠くに見える地平線へ消えていく。


建物、否、廃虚の存在は地平線に辿り着くまでに途切れていたが、それでも随分な距離である。


車、人の影は見当たらなかった。
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