蜜林檎 *Ⅰ*
ホテルから出て行くとタクシー
の傍に、サングラスをかけて
立っている樹の姿がある。

ドキドキ

ドキドキと鳴り止まない

胸の鼓動。
 
樹の傍へ駆け寄る杏は、段を
踏み外し、転倒しそうになる。
 
そんな杏を出会った時のように
抱き留める樹。
 
二人は、顔を見合わせて笑う。

「やっと、逢えたね」

彼の背中に一生懸命に
腕を回す杏を

強く強く、抱きしめる樹に

杏は囁いた。

「イツキ、逢いたかった」

二人は、タクシーに寄り添って
座り、樹のホテルへと向かう。
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