蜜林檎 *Ⅰ*
樹の言葉に杏は頷き、二人は
眠らずに会話を交わす。

「イツキ、私をここへ連れて
 来てくれてありがとう
 
 本当は、私、不安だったの
 貴方と別れた後、いつも
 あれは、夢だったんじゃ
 ないかって、そう思ってた
  
 だけど今日、ここへ来て
 私の目の前にいる貴方は
 実在して、ここで生活を
 送り、毎日を過ごしている
  
 これは、夢なんかじゃない
 現実なんだって・・・
 やっと、思う事ができた」

「そう、これは現実・・・
 俺の全ては、杏、君のもの」

杏は、起き上がりベッドに座る

そして、仰向けに眠る樹に
真剣な瞳で問いかける。

「消えてなくなったり
 しないよね?」

樹は杏の隣に座り

肩を抱き見つめる。
< 204 / 337 >

この作品をシェア

pagetop