蜜林檎 *Ⅰ*
樹は、杏から全てを聞いた以上
このままの関係を続けていく事
はできない・・・そう決心して
杏を送って行く途中

彼女に別れを言うつもりでいた

ところが、口から出た言葉は

・・・・

一緒に居たい、という樹の本音

・・・願い。

『百合を深く傷つけた俺が
 こんな事を願っちゃいけない
 のは分かってる・・・
 
 でも、ごめん親父さん

 ごめんユリ
 
 俺は・・・』

時が止まる・・・

杏の白い肌に、樹の細く長い指
が優しく触れる。

杏は、樹が別れを言おうと
していた事に
 
気がついていたのだろうか・・

「お願い、イツキ
 わたしを、壊れるほどに
 強く抱いて・・・
 
 俺だけのものだって
 刻んでほしい」

杏の白い肌が、赤く染まり・・

樹だけのものになる。
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