蜜林檎 *Ⅰ*
百合の真っ直ぐな瞳の奥に

杏が写る。

幼い頃に、樹の生の声を
聞いた事があると知り
 
夢のような気持ちで、胸が
いっぱいになる杏だった。

「今思うと、わたしとイッキの
 赤い糸じゃなくて
 アンとイッキが赤い糸で
 結ばれていたんだね
 
 だから、二人はずっと一緒に
 いなくちゃいけない・・・
 
 その為にもお父さんに
 許してもらおうね」

「ユリちゃん・・・お父さん
 許してくれるかな?」

「二人が、真剣なんだもの
 きっとお父さんにも
 その思いが通じるわ」

『どうか、大好きなお父さんに
 彼との未来を
 許してもらえますように』

例え、許してもらえなくても

杏の想いは変わらない。

百合を呼ぶ雅也の声が響き

杏は菜那の待つ部屋へ。
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