声恋 〜せいれん〜




「すずさん、そのワンピースすごくかわいいですね! やっぱりすずさんには白がにあいますよ!」




「すずさん、先週の『ラブどき☆温泉』みましたよ! いや~、あの入浴のシーンと卓球バトルのシーン、よかったです!」




「すずさん、今日の食堂のCランチはすずさんのお好きな海老フライ定食でしたので食券買っときました!」




「きゃっー、おぼえててくれたの?! すずうれしーっ! ありがとぉ」




そのひとつひとつに、ブリブリとアイドルスマイルをふりまきながらこたえていくすず。春からずーっとあの調子をくずさずにいられるなんて…アイドルの鑑だ…。




もう、すごいとしか言えない。




ぞろぞろ…ぞろぞろ…彼女が移動すると、とりまき男子たちも大移動する。




のこされたのは…。




「桜木さん、わたしたちも食堂行きましょう」




スラッとした立ち姿、キラキラとした長い髪をなびかせて、千明さん(と、取り巻きの女子たち)が声をかけてくれる。




「あ、はい、ありがとうございます」




年下なのに、つい敬語を使ってしまう。千明さんは16歳なのに…。




だってしょうがないじゃない…。




あいては中学の時からモデルで活躍している、あの藤堂千明(とうどうちあき)さんなんだから。



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