声恋 〜せいれん〜
ソロの始まりとともに、二匹の黄金色に光る虎があらわれ、メンバーの周りを歩き出す。
先ほどまでの強い曲調とは変わって、なめらかにカイのギターが舞う。
桜の花びらのように。
30秒…。
1分…。
さらに悲しみは続く。
一瞬の間。
虎の吠えるアップ。
蓮也のまなざし。
一転して風が吹き上げ、数百本の桜から一斉に花びらが大量に舞い上がる。
ふりしきる桜の花びら、迫りくるかのような城の姿、激しく吠えるメンバーに呼応するように映し出される虎たちの姿。
画面は無限の花吹雪におおわれて、蓮也の唱吠える「Wake Up!」の言葉とともにはげしく揺れ動く。
どこまで行ってしまうのか。
どこまで行けばいいのか。
やがて嵐が過ぎ去り、曲はやわらかく着地を求める。
二匹の虎は寄りそいながらゆっくりと歩み去り、桜たちはまた落ちつきをとり戻す。
一枚の花びらが蓮也の目の前に落ちてきて、彼は手のひらにそっとそれを受けとる。
彼がそれをこちらにさしだすと、それはピンク色をしたギターのピックに変わる。
彼の瞳が、わたしに「おめでとう」を言う。
世界に夜明けが、おとずれる。