High and dry (はつ恋)
始めに
14歳のその秋の始まりは、何かを予感するみたいに、世界中が完全な色に輝いて見えた。

つやつやと茶色い栗や、その栗の中の鮮やかな黄色だとか、紙袋から出したときのまいたけの乾いた木のような匂いだとか、かぼちゃの緑と黄色やあのほくほくした感じだとか。
金の光の中の、吹き抜ける風に舞う金の落ち葉、そしてその清潔な、何かが燃えたあとみたいに深い香りがする空気だとか。

全部に、いつもよりふんだんに金の粒がちりばめられているような感じがした。
雨が降って道のほこりが洗い流されると、澄んだ空気がまるで生まれたてのようにあたりに満ちてきて、生き物みたいにうごめきだす。
そして、匂いや、ちょっと鼻の奥がつんとするような冷たさや土の濡れた匂いがあたりに立ち込める。
なんて贅沢なのかしら、まるで世界が秋を祝っているようだ、と私は思った。
いろんなものを通して、自分の中の美が、世界に力強くぐんぐんと伸びていく。
そういう気持ちがはちきれそうだった。
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