花とアイドル☆《完》
まさかこんな時間に誰かが来る
なんて思っていないので、花乃は
思いっ切りビクッとして手を
止める。


「は、はい…?」


戸惑いながらも声を返すと、
ドアの向こうから、遠慮がちな
声が聞こえてきた。


「花乃さん? オレだけど――」


「た、拓斗クン!?」


――か、帰ってたんだ…。

例によって夕食時には不在だった
拓斗だが、いつの間にか帰って
いたらしい。

ずっとミシンをかけていたので、
物音に気付けなかったのだろう。


まだパジャマには着替えてなかっ
たので、花乃はためらうことなく
ドアを開けた。
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