君に愛の唄を


でも、その幸せは校門をくぐる時に遮られたのだった。


左耳のイヤホンを外された。



「なに聴いてんの?」


「ちょ、蓮!!……もう!」



私の左耳にあったイヤホンは、蓮の右耳につけられた。


二人の視線が交わったと同時に、二人は笑い合った。



「朝から俺の曲?」


「うっさい。…返せっ!」



私は蓮の耳からイヤホンを無理やり引っ張って取り返した。


蓮は顔をしかめて「いてっ!」と耳を押さえた。


そして、二人のおいかけっこは始まったのだった。


夏休みが終わったとはいえ夏には変わりがないのだから、後で後悔したのは言うまでもない。
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