極彩色のモノクローム

「僕を、買って。」



小さく、そう告げた。


私の最後の願い。


貴方に、

抱かれたい。


マスターがそれを聞いて、
息を飲んだのがわかった。


「何が、あった?」


マスターはしばらく何か考えるように黙った後、
そう聞いた。


「書いてもいない婚姻届出されて、いつの間にかそういう事になってたの。」


私がそう言ったら、
マスターは


「なんだよそれ。」


と呟いた。


私はその肩に目を押し付ける。


好きって言ってしまいそうになるのを、
何とか飲み込んで。


そんな、重い関係じゃなくていいんだ。


あの担当医みたいに、
ボランティアだか
募金活動の一環で構わない。


「だから、あんな好きでもない人に汚される前に、僕を汚して。」


私の言葉に、
マスターの腕が強く、
私の体を引き寄せた。


< 106 / 173 >

この作品をシェア

pagetop