街で君の唄を聞いた

すると、いきなりレザが飛びついてきた。



「凄いやん!つーかラグアス、お前歌えたんやなぁ!超綺麗やったんやけど!」

「はいはいどーも」

「素っ気ないなぁ。もちっと喜べ!」



歌声を褒められていい気はするが、あまり嬉しくはない。
…とは言えないな。
あー、心が読めるのが俺だけでよかった。


すると、クレイアさんがしまったという顔をした。
何だ?このもやっとした感じは…?
こう…黒い靄があるような嫌な気分は…。



「しまった…!鐘が鳴ってしまう!」

「鐘?」



誰かが聞き返した。
鐘が鳴るっていうのは…どういう事だ?
それに今まで来た道には、どこにも鐘があるような場所は無かった。

教会なんていう建物は、無かった。



「ええ。実は城の裏に小さな教会があるのよ。今は戦があるから小さな子供を養えないの。そこの教会の上に鐘があるの」

「へぇ…。鳴ると何か起こるんですか?」

「五回目の鐘が鳴った時、住民達は城を襲撃するわ。もう四回は鳴ってしまっているの。今のお父様はおかしいというのに、仕掛けるなんて無謀だわ…!」



そこまで、北大陸は危ういということか。
俺達はそこまでと知らずに、生活してきたんだな…。

王は、一体何をやらかしたというんだ。
険しい顔をするクレイアさんを余所に――――


リンゴーン…リンゴーン…


虚しくも鐘が響き渡ってしまった。
間に、合わなかった。

ここは近くの森だが、遠くから住民の声が聞こえてくる。
手遅れか…!



「……悔やんでいても仕方ないわね…。教会の裏から城に繋がっている通路があるわ。行きましょう」

「…無理、しないでくださいね」

「…レイヒちゃんは優しいのね。ありがとう」



冷灯に微笑みかけるクレイアさんは、どこか哀愁漂う顔を小屋に残して、先に出て行った。

…戦争なんて、いいもんじゃないのに。
俺はこの身で、経験をしたからわかるんだよ。

虚しさと憎しみを持つってな。



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