もう1人の彼氏
久しぶりのメール

“本番いきます、10秒前。
…5秒前、4、3、2、…”

「おはようございます。三反崎絵里香です。
本日の市場動向をお伝えします…」



私は大手証券会社で働いていて、週1回、テレビに出て市場の話をする。

望んでもいなかった華やかな仕事が、ある日突然舞い込んできたのだ。


入社した時は、いわゆる一般職だった。

総合職になりたくて、企画書を進んで出したり、提案したりしてきた。

そのうち、上司がコイツはやれる奴だと評価してくれ、新規プロジェクトメンバーに抜擢された。

そして、取締役からテレビに出る話まできたのだ。

「でも、私、実は来年早々に結婚してもうすぐ退職するので、そんな大役は私には…」
と、断ろうとしたら、

「おまえには、花道を飾らせてやる。だから、やってくれ。」
と言われ、やることになったのだ。



ちょうど、結婚を控えているからブライダルエステを受けているし、最高のコンディション…たぶん人生で最高に綺麗な状態でテレビに出られることが、何よりも嬉しかった。



《隆正…見てくれてるかなぁ………》
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