優しい本音で、溶かして。
「あたしそろそろ・・・」

そう言って、そそくさく席を立った。

「え?夕食くらい食べてけば?」

お姉ちゃんはそんなあたしを不思議に思ったのか、引き止めた。



「ごめん、今日は帰るね。これから友達と約束してるから」



そのまま、お姉ちゃんと雅人さんが住むアパートを出た。

これ以上、雅人さんの顔を直視できないと思ったから。

幸せそうに笑っている2人を見るのが、辛かった。


最低・・・

実の姉の幸せを辛いと思うなんて。

妹・・・失格だよ。


別に、これから友達と約束なんてしていなかった。

ただの、口実に過ぎない。


ここでまた、お姉ちゃんに嘘をついたという罪悪感が募ってきた。

お姉ちゃんだけじゃない、雅人さんもだ。


薄暗い辺りを見回すと、何となく不気味に感じた。

寒気がする。




――やっぱり、夕食ご馳走になったほうが良かったのかな?




周辺に、人は誰1人としていない。

あたし・・・だけ?

何だか、怖くなってきた。



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