飴色蝶 *Ⅱ*
浴室でシャワーに打たれながら
菫は、今にも、発狂しそうな
自分の姿を見つめた。

そして、その場にしゃがみ込み
両足を抱える。

シャワーの温水は容赦なく
菫の体を濡らし叩きつける。

『必ず、お前を迎えに来る
 結婚しよう』

庵の声が、ふと彼女を寂しさ
から救ってくれる。

イオリ・・・早く、迎えに来て

寂しいよ。

電話での菫の声が、元気で
あればある程に、彼女が無理を
している事が分かった庵。

彼は、今すぐ飛んで行って

菫をこの腕に抱きしめて
やれない虚しさに
胸が張り裂けそうだった。

菫には知らされてはいない
かったが、抗争は既に
始まっていた。
< 117 / 410 >

この作品をシェア

pagetop