飴色蝶 *Ⅱ*
「イオリ、来ないで
 私は、貴方を愛していない
 昔の女なんか放っておいて
 自分の事を大切に・・・」
 
今度は、さっきよりも、もっと
酷く菫の頬は打たれ、唇の端が
切れて血が滲み出る。

「余計な事を・・・
 車へ連れて行け、三代目
 お前の女は預かった」

「何?お前、誰だ」

「会澤組本部事務所まで来い
 来ない時は、昔の女だろうが
 容赦はしない
 
 堕ちるところまで
 堕としてやる」

そう吐き捨てる、男の声が
聞こえてくる携帯電話を今にも
壊すかの勢いで、握り締める

庵の顔つきが鋭く変わる。
 
凶器を帯びた形相は

足が震える程に美しい。

「親父・・・?」

「すみれに指一本、触れるな
 
 触れたら、
 
 お前ら全員、殺る」

すみれ、待ってろ。
 
俺が必ず、お前を助ける。

俺の命に代えても

お前を守ってみせる。

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