~秘メゴト~
第1章 淡いハートの花弁

あたらしい朝

 ピンク色のカーテンの薄い膜に遮られつつも、春の朝の陽射しは容赦なく、ベッドに丸まるまだあどけない顔を明るく照らしつける。

 庭のいちぢくの樹の枝で、すずめたちが一日の始まりを告げている。

 姫乃は寝返りをうつと、はっと瞼を開けた。

「…今何時!?」

 かばっと布団を跳ね退け、ベッドヘッドにちょこんと置かれた白いハートの目覚まし時計を見遣る。

 ――5時37分。

 未だアラームは鳴っていなかった。

「あ…なんだ」



 やだ、寝過ごしたかと思っちゃった。まだ余裕。



 もぞもぞと柔らかな布団のなかに戻りかけて、またはっとする。


 そうだ、今日は入学式だ。


 思い出すと、姫乃は背の高いベッドから跳び降り、勢いよく階下へと駆け出した。





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